原告とウェブサイト管理者との関係について

個人がウェブサイトを開設するにあたって、そのウェブサイトの管理者を本名のまま公表することはそれほど多くないこと、ウェブサイトを登録する際も住所や本名を登録せずに公開できるなど、原告側にとっては「ウェブサイトの管理者は自分だ」と証明することは難しいものと思われます。
今回の裁判において原告はどのように証明したのか、判決文から読み解いていきます。

● 認定事実
前記前提事実、争いのない事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。

(1) 本件各写真の撮影
原告は、以下のとおり、原告が選択した特定の撮影場所に赴き、同所で、カメラ等(略)を用いて、走行中の被告親会社運行の鉄道車両を動画撮影し、その後、動画撮影した映像をコマ割りした上でそれをつなぎ合わせる編集作業を経て、本件各写真を制作した(甲12〜18、20、26、35ないし41、77、弁論の全趣旨)。

(2) 本件各写真の本件ウェブサイトへのアップロード
原告は、本件各写真を制作した後、本件ウェブサイトに本件各写真の写真データをアップロードし、一般利用者がこれらを閲覧できるようにした。原告は、本件各写真の写真データをアップロードする際、本件各写真の右下に各アップロード時の本件ウェブサイトのURL(以下、個別のURLを特に区別せず「本件URL」という。)を貼付した。

(略)

(4) 本件各写真の撤去後の事情
ア 原告は、被告らのインターネット上のお問い合わせ窓口を利用して、被告らに対し、原告が管理する本件ウェブサイト上にアップロードされた本件各写真が本件各ポスターに無断で利用されている旨を伝えた(甲25)。被告らは、原告に対し、本件各写真を本件各ポスターの制作に利用した点につき、お詫びするとともに、監督責任等が行き届いていなかったことを重く受け止め、今後、原告と直接話し合いをして経緯などを説明するなどの対応をとる旨伝えた(甲3(1枚目))。
イ 原告は、令和2年11月16日、被告らの職員との間で、本件各写真が本件各ポスターの制作に利用された経緯やその後の対応につき、話し合いを行った(甲4(3枚目以下))。

(略)

(5) 上記(1)及び(2)の事実認定の補足説明
被告は、原告が本件ウェブサイトを管理していること及本件各写真を撮影したことを争う。
しかしながら、甲35ないし41によれば、原告は、本件各写真の写真データのオリジナルのデータを保有していることがうかがわれ、原告が本件各写真を制作し、当該データを利用して本件ウェブサイトにアップロードしたと考えるのが自然であるし、上記認定事実(4)ア、イ及び甲20によれば本件ウェブサイトの管理者のメールアドレスと原告が被告らと交渉した際に使用していたメールアドレスが同じであることが認められ、これらの事情からすると、本件各写真は、原告が本件各写真を撮影して編集する作業を経て制作し、本件ウェブサイトにアップロードしたものと認められ、これを覆すに足りる証拠はない。

総評

裁判中に被告側からどのような反論が繰り広げられていたのかはまったく不明であるが、原告からウェブサイトで公開されている写真のオリジナルデータを保持していることが証拠として提出され(甲35ないし41)、そこからウェブサイトにアップロードしたことが自然であると判断している。通常、デジカメ等で撮影された画像はピクセル数が大きく、ブログなどにアップロードする際はオリジナルデータを何かしら加工する必要がある。そこで、ブログなどのウェブ上のデータと、それよりも大きかったりトリミングされていないオリジナルデータが提出されれば、基本的に認められそうな傾向があるようだ。
また、それ以外でもウェブサイトに登録されていたメールアドレス(甲20?)を用いて被告側と交渉していたこと(上記認定事実(4)ア、イ)が認められている。
これらのことから、原告が写真を撮影し編集した上でウェブサイトにアップロードし、その写真を本件従業員が原告に無断で使用したと考えることが自然であるという判断がなされた。

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