職務著作について

職務著作は、著作権法15条1項で「法で規定された一定の要件を充たすことで法人その他使用者(法人等)が著作物の著作者になること」と定義されています。つまり、一定の条件を満たしていれば、企業などの団体名で制作・公表された著作物については、企業などの団体が著作者となる、という規定です。

原告の主張

 本件ポスターの制作の目的は、親会社の駅の広告目的であることからすると、本件ポスターの制作は法人である被告の発意に基づき、業務の過程において制作されたものというべきである。また、本件ポスターには、「(被告会社の名前を含まない団体名)」などの組織の名称が付されているところ、これを通常に読めば、当該組織が所属する法人である被告を指していることが明らかであるから、本件ポスターは、被告の名の下において公表したというべきである。このように、本件ポスターは、被告の職務著作に該当するから、被告は、これを制作し、掲示したことにより、原告の著作権及び著作者人格権を侵害したというべきである。

被告の主張

 本件ポスターが、被告の職務著作に該当することは争う。

裁判所の判断(判決)

 原告は、本件ポスターが被告の職務著作に該当する旨主張する。
しかしながら、甲26によれば、本件ポスターには、被告の名称が付されていないことが認められるから、著作権法15条1項にいう「その法人等が自己の著作の名義の下に公表するもの」に該当するということはできないから、原告の主張は採用できない。

総評

会社名が明記されていないことを理由に、本件ポスターは職務著作ではないという判断がなされた。
これは、例えば「自衛隊」としか明記されていないポスターに著作権侵害があった場合、防衛省の職務著作として責任を問うことができないという抜け穴的要素の強い判例になってしまっていると感じる。

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