同一性保持権について

著作物とそのタイトルが著作者の意図に反する改変(加工など)を受けることを禁止した権利。「翻案権」が著作物の権利であるのに対し、「同一性保持権」は著作者の権利である。

(同一性保持権)
第二十条 著作者は、その著作物及びその題号の同一性を保持する権利を有し、その意に反してこれらの変更、切除その他の改変を受けないものとする。

原告の主張

翻案権が侵害されているのであるから、本件ポスターの制作は、本件写真に変更を加えるものであるから、本件写真の同一性保持権を侵害したものである。

被告の主張

 本件写真に一部変更を加えたことが同一性保持権を侵害する可能性があるとしても、本件ポスターを掲示した行為は、本件写真を改変する行為ではないから、同一性保持権の侵害には当たらない。

裁判所の判断(判決)

 本件ポスターは、翻案権侵害の認定のとおり、それぞれに対応する本件写真との相違点があるから、本件従業員は、本件写真の表現を改変したものというべきである。そして、原告が、被告及び本件従業員に対して本件写真の利用を許諾していなかったことに争いはないから、本件従業員による本件写真の上記改変は著作者である原告の意に反するものというべきである。したがって、本件従業員がした本件ポスターを制作した行為は、原告の本件写真に係る同一性保持権を侵害する行為である。

総評

簡単に言ってしまえば、著作財産権(著作物そのものの権利)である翻案権が侵害されていることから、著作者人格権(著作者自身の権利)である同一性保持権が侵害されたと認められた、という一言である。ただし、加工などの改変が行われていなければ、同一性保持権の侵害は認定されなかったかもしれない。
なお、被告側(会社側)の主張は、「ポスターの作成をした即ち同一性保持権の侵害をしたのは本件従業員だから、会社側がおこなった『掲出する行為』自体は同一性保持権の侵害に当たらない」という主張をしていた模様。

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