【裁判外考察】被写体の所有権について

所有権とは、「法令の制限内において、自由にその所有物の使用、収益及び処分をする権利を有する。」として、民法第206条に規定されている。

簡単に言えば、そのものを全面的に支配・すなわち自由に使用し、収益を得たり、処分したりすることのできる権利のことである。

被告側は被写体の鉄道車両を所有しているから、それを写した写真に関しても所有権が発生し、写真に関しても占有的な使用権を持っているという主張をすることが考えられる。

しかしながら、これに関しては「かえでの木事件(東京地裁平成14年(ワ)1157号平成14年7月3日判決)」の中で「所有権は有体物をその客体とする権利であるから、本件かえでに対する所有権の内容は、有体物としての本件かえでを排他的に支配する権能にとどまるのであって、本件かえでを撮影した写真を複製したり、複製物を掲載した書籍を出版したりする排他的権能を包含するものではない。」として、撮影された写真にまで所有権を及ぼすことまでは認められないという判断がなされている。

また、商用利用を目的とした写真撮影が禁止された場所において撮影された写真を使用した場合にあっても、「平等院パズル事件」という有名な裁判がある。この事件自体は和解したために明確な判例ではないものの、訴えられた側(撮影された写真を使用した側)によれば「違法行為はない」ことを文書で認められたこともあり、著作権法上では何ら違法行為がないことがわかっている。

今回のサイドビュー無断使用による裁判にあたり、
・列車の写真を撮影すること自体について、被告側は禁止を謳っている場所での撮影ではなかったことや、仮に撮影禁止場所からの撮影であったとしても著作権法上では違法性がない可能性が極めて高いこと。
・過去の判例により、所有権を主張したとしても認められる可能性は極めて低いこと。
などの点において、被告が所有権の侵害を理由に反訴を提起すること自体難しかったものと思われる。

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